この街のステキな方々 ②

「私はお医者さんになりたかったの。女医さん。でも、それがねぇ・・・」

 藤蔭桃枝(ふじかげ ももえ)さんは、こうさりげなく切りだされました。日本舞踊・藤蔭流の師範、本名・山川ヨシさんはわが町10-Bのお住まいです。台風あけながら冷たい雨がしとど屋根うつ町内会館でお話をうかがいました。
 
 「それがねぇ・・・83歳のいままで踊り続けているのですよ」 おっしゃる背筋はピンと伸び、紺のお召しものに黄土の帯、締めた帯〆はお着物にあわせた同色紺の細身。日舞・藤蔭流をここ鎌倉に守っていくとの気概が満ち満ちておりました。

  ご経歴を紹介しましょう。福島県の鉱山(やま)持ちの恵まれた七人兄弟姉妹まん中のお生まれです。同県で盛んであった藤蔭流になじみ、上達は早かった。ずっと福島だったのが初めての東京は銀座資生堂でのお見合いで、そのまま今日まで山川静夫さんとご円満です(ご主人さまは同姓同名というだけで、あのNHKの元アナウンサーとは別人です、念のため。)
  
 藤蔭桃枝さんは当大平山丸山町内会の活動にも大変ご熱心です。昭和55年、町内会役員をされました。町内会での助け合いの会や白扇会、また深沢地区社協主催のお食事会、さらに同地区の文化祭「芸能のつどい」には、国立大劇場(!)出演が重なった年だけをのぞいて初回からずっと参加されています。それも今年は第34回で11月23日(日)深沢支所にて催されます。お弟子さんともども5人での参加もすでに決まっています。舞踊をつうじて、お話し合い・お見知りあい・ご近所力の醸成に努めておられることがよくわかりました。
 
 お稽古は毎週火曜日の午後ご自宅で。お弟子さんはなんと89歳から一番若い方で73歳。だから若い人が欲しい。伝えたい。
 「町内には子供会が二つあると聞いています。いかがでしょう。お孫さま、お子さまづれで稽古ぶりなど気楽に見に来て下さい。」
 
 こうおっしゃってお話を終えられました。冷たい雨はもうすっかりあがっていました。
 
(山田壽雄記)
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